書店員でエッセイストの新井見枝香さん(写真:本人提供)
書店員でエッセイストの新井見枝香さん(写真:本人提供)
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 暗い話題が多い時代だからこそ、本を読むことで希望を見出したい。AERA 2022年5月2-9日合併号の特集「今読みたい本120冊」では、各ジャンルの専門家がおすすめの本を10冊ずつ紹介。その中から、書店員でエッセイストの新井見枝香さんが選んだ「小説」をお届けする。

【新井見枝香さんオススメの10冊はこちら】

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 2022年本屋大賞で『同志少女よ、敵を撃て』が大賞になりました。これまでは日本人の著作であっても、海外が舞台で日本人が出てこないような小説はあまり読まれない傾向にありました。ところが今、海外小説のような作品が大賞を取って、多くの人に支持されています。

 リモートで気軽に世界中と繋がれたり、外国で暮らす知り合いが増えたり、世界情勢をほぼリアルタイムで知ることができたり。ここ数年で、海外がより身近になったからではないかと思います。だからこそ、もっと海外のことを知りたい、戦争も他人事ではないと、より思うのかもしれません。

 そういう気持ちが生まれた時に、こういう小説を読むといいんじゃないかなということで、「世界が舞台(『同志少女よ、敵を撃て』『らんたん』『三つ編み』『逃亡者』)」、「戦争(『遠の眠りの』『宝島』『ののはな通信』)」、「背中を押してくれる(『我が友、スミス』『草原のサーカス』『ローカル線で行こう!』)」という三つのテーマで選書しました。すべてが前向きでいいことばかりの小説ではないけれども、小説だからこそエンターテインメント性があって、必ず光がある作品を選んだつもりです。

AERA 2022年5月2-9日合併号より
AERA 2022年5月2-9日合併号より

 事実を知りたいだけなら、ノンフィクションを読めばいいと思うんです。私があえて小説を読むのは、フィクションだからこそ、自分事に感じて、思考を広げていけるから。何かについて直接的に書かれていると、それでしかないけど、小説って受け取り方次第でいかようにも読める。同じ小説を読んでも前の時は、「こんな気持ちにならなかったのに」とか自分の中でも変化がある。だからこそ自分のものになるんです。

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