デビューしてから現在に至るまで、多くの映画賞を受賞し続けてきた俳優の広瀬すずさん。新作映画「流浪の月」では、誘拐された過去を持つ難しい役どころに挑戦しています。作家・林真理子さんの対談で、広瀬さんが撮影の舞台裏を語ってくれました。
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林:広瀬さんこんにちは。4年ぶりですね。たしか映画「ちはやふる‐結び‐」のときで、あのときは「すずちゃん」って気軽に呼べたけど、いまこんなすごい女優さんになっちゃって、「広瀬さん」としか言いようがないですよ。
広瀬:ウフフフ……。
林:今度の映画「流浪の月」(李相日監督、5月13日公開)は、原作が凪良ゆうさんのベストセラー小説(『流浪の月』)で、私も読みましたけど、広瀬さんが演じた役(更紗)ともう一人の主人公の彼(文=松坂桃李)の心境とか行動を映像で理解してもらうって、難しいだろうなって思っていたんです。作品を拝見したら李監督、いろんなことを省いていましたね。たとえば更紗をあずかっている伯母さんのところでのこととか。
広瀬:ええ、ええ。
林:それを更紗ちゃんのセリフで言わせるんだけど、セリフだけで見てる人に気づかせなきゃいけないから難しいですよね。
広瀬:そういうところ、いっぱいありましたね。
林:この本、読んでました?
広瀬:お話をいただいたときに読みました。
林:演じるの、ちょっと難しいなと思わなかったですか。
広瀬:更紗を演じることがわかって読んだということもあって、演じるうえでのヒントが多かったですね。
林:広瀬さんが静かなカフェで本を読んでいるたたずまいが本当に美しくて、彼女の本質があらわれてるなと思いました。カフェのオーナーの文も近づいてこないし、あれが二人の理想の関係だったんだろうなと思いましたけど、それを壊しちゃったのが更紗の婚約者の亮(横浜流星)で、更紗の心をとらえることができない。ここまで更紗ちゃんが好きなのに可哀想って、私なんか思っちゃいましたよ。