ラジオも新聞も同様に、報道の内容が百八十度変わった。1学期までは国民の英雄として新聞やラジオで褒めたたえられた人物たちが、2学期になって米軍に逮捕されるようになると、彼らは逮捕されるのが当然だと、躊躇(ちゅうちょ)なく非難し始めた。その典型が東条英機であった。
私は、先生を始め、偉い人間たち、そして新聞やラジオなどマスコミ、さらに政府というものをまったく信用できなくなった。これが私の原点である。
さらにこうした価値観の大転換が、もう一度あるのだ。
小学校6年から中学校3年間と、先生たちから戦争は悪だ、君らは平和のために頑張れ、と言われ続けてきたのだが、高校1年生のときに朝鮮戦争が始まり、私が「戦争反対」と言うと、先生たちから怒られ、「お前は共産党か」と言われた。
こうした体験から私は、伝聞推定ではなく、一次情報を自力で直接確かめなければならないと強く感じて、ジャーナリストになる決意をしたのである。
ジャーナリストとして、私は命を懸けて言論・表現の自由を守り、日本を絶対に戦争をしない国として堅持させ続けなければならない。そのために生きているのだ、と思い定めている。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年5月20日号