投げやりになって答案用紙の裏に詩を書いて提出し、授業に出ないで図書館にこもった。そんなとき支えになったのが大正時代のアナキスト、金子文子の自伝だった。
「貧しくてまともに学校にも通っていない人が、自力で勉強してすごい思想にたどりついた。そのことに勇気をもらったので、ミアにも読ませたかったんだと思います」
ミアは図書館でフミコの自伝に出合い、深く共感する。ミアの現実と100年以上前のフミコの生活が呼応するように物語は進んでいく。
そしてミドルクラスの少年に詩をほめられ、ラップの歌詞を頼まれる。
「階層が違う人たちのエンパシー(他者への想像力)という、私が普段マクロ目線で考えていることが小説に出てきちゃった気がします。分かり合おうとする努力を諦めちゃいけない。私たちが望めば新しい世界を作り上げることができるんですから」
(仲宇佐ゆり)
※週刊朝日 2022年8月5日号