東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、大谷翔平選手が今季、より負担が増えることを指摘する。

【写真】コロナ禍でコンディション維持が難しくなり離脱した選手も

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 エンゼルスの大谷翔平が5月1日(日本時間2日)のホワイトソックス戦の七回の走塁で右股関節の張りを訴えて交代した。大事には至らず、5日(同6日)のレッドソックス戦では先発して7回無失点で3勝目。打者でも2安打1打点と周囲を安心させた。

 今年は、投手として降板後もDH出場が可能な「大谷ルール」ができた。昨年よりも打席数が増える状況はそろったが、それだけ負担が増えるということだ。コンディションをどうコントロールするかが、昨年並み、それ以上の成績を残すには重要なことだ。

 試合に出ている以上、走攻守のどこかで手を抜くというのは大谷翔平のポリシーにないであろう。もし、抜く場面があったとしても、確実にアウトになるという内野手正面の強い打球で、一塁ベース手前の数歩を緩めるといったところぐらいか。ただ、それではあまり負担軽減の効果はない。

 手としては、強制的に休養日を作ること。もしくは点差が開いたら、終盤は強制的に退くことが求められる。よく、盗塁企図数を減らすという考えも出ているけども、プロとしてグラウンドに立っている以上、そういった加減はしないほうがいいし、逆にリズムを崩すことになる。大谷は「二刀流」としてのリズムを大切にしているだろうし、私が日本ハム時代からの大谷の全力プレーを見るかぎり、手は抜けない。疲れの兆候がある時は、首脳陣が試合に出さないという決断をしてもらいたい。

 私も股関節に違和感を覚えたこともあるが、ひどい状態にならなくてよかった。股関節をうまく使えないと柔軟性がなくなってしまうから。今27歳か。二刀流をこれだけハイレベルな形で体現した選手はいないのだから、このレベルをいつまで維持できるかなんて誰もわからない。ただ年々、故障のリスクは高まる。大谷には、年を重ねるごとに、自分の体に敏感になってほしいと思う。若いうちは、少しぐらい大丈夫と思っていることでも、無理はできなくなるわけだから。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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