峰なゆかさん(撮影/松永卓也)
峰なゆかさん(撮影/松永卓也)

「本当に流産した人が見た時にどう思うのかな、などいろいろ考えました。でも、妊娠初期は肉体的なつらさだけではなく、流産するかもしれないという精神的な不安はかなり大きいんです。誰もがそう感じているはずなのに、でも、みんな書かない。だから伝わりやすく描く必要があると思ったんです」

 もしも流産した時に自身の心が壊れないように、妊娠初期は胎児に愛情を持たないようにしていたことも描いた。

「中には『母親としての自覚がない』と怒る人がいるかもしれません。でも、読者の方からは『わかる!』という反応が多くて、みんな同じような心境だったことが改めてわかりました」

 安定期に入る前は「食べづわり」に悩まされた。街中で路地に隠れておにぎりをほおばったり、カップ麺を作るお湯が沸く時間すら待てずに硬い麺を食べたりしたことも。その姿を見たパートナーの「チャラヒゲ」からは、「妊婦さんは2人分食べなきゃね」と励まされたが、これに峰さんの心はざわつく。

「その時は妊娠7週目で、胎児はまだ1センチほどですよ。なのに2人分食べなきゃね、なんてありえないでしょう。食べたら吐いてしまうつわりは心配されるのに、『食べづわり』は、食欲旺盛で元気なだけ、と思われがちなので、そのつらさが周囲に伝わりにくいことを痛感しました」

 そんなつらい日々のなかでも、たまに「食べづわり」がこない日があると、今度は胎児がおなかの中で亡くなっているのではないかという不安に襲われた。

「産婦人科に行って『死んでいるかもしれないので診てください』なんて言うのは気まずいし、先生には言いにくいですよね。不安になってすぐ診てもらいたいというときでも、病院に行くのも時間がかかるし、予約が埋まっていれば診てもらえるかもわからないし。将来的には、エコーの機械が自動販売機みたいに街中に設置してあって、500円入れたら、すぐに胎児の心音が聞けるような世の中になったらいいのにと思います」

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