写真はイメージです(gettyimages)
写真はイメージです(gettyimages)

 イギリスとアメリカを中心に、世界各地で原因不明の子どもの急性肝炎の報告が増えている。厚生労働省は、日本でもこの肝炎の可能性のある16歳以下の子どもが24人(5月20日時点)おり、うち2人は、主要な原因として関連性が疑われているアデノウイルスが検出されたと発表した。日本でも流行する懸念があるなか、親は子どものどんな異変に気を配ったらよいのだろうか。大人にも感染するのか、対策などを、長崎大の森内浩幸教授(小児科学)に聞いた。

【白色便、倦怠感…肝炎の主な症状】

*  *  *

――海外で報告されている原因不明の急性肝炎は、日本でも増えているのでしょうか。

 原因不明の子どもの急性肝炎は、昔からあって、珍しい病気ではありません。原因を調べているうちに、いつの間にか治ることがほとんどです。肝臓移植が必要な重症例も年間数十例あり、その大半は最後まで原因がわからないのです。

 ただ、現在、イギリスとアメリカを中心に海外で報告が相次いでいる急性肝炎は、短期間に患者数が増え、通常よりも発生頻度が高いです。また、多くの症例からアデノウイルス41型が検出され、関連性が疑われています。さらに、1割近くは肝臓移植が必要とされるくらいに重症だということも特記すべきことで、何か新しいタイプの肝炎と推測されます。

 日本は、今のところアデノウイルスが見つかったのは2例のみで、重症には至っていません。小児の原因不明の急性肝炎はこれまでにも少なからず起こってきたので、このくらいの事例が上がってきても不思議ではないという程度です。現時点で日本においては、この新しいタイプの急性肝炎が増えているとまではいえません。

――国内においては、そこまで警戒しなくてよいということでしょうか。

 アデノウイルスは、急性胃腸炎の原因としてノロウイルスやロタウイルスの次に多いほど、ごくありふれたウイルスの一つです。他の感染症と同様に、毎年のように感染者がたくさんいたのに、新型コロナウイルスの影響で、この2年ほど、流行しませんでした。そこに、昨年末からイギリスで急増し増え始めました。

 日本でも、ここ数年はアデノウイルスの感染がほとんどなく、免疫を持っている子どもは多くありません。昨年の夏、日本でRSウイルス感染症が流行したように、しばらく出ていなかった感染症が、免疫のない子どもたちの間で急にはやることはあり得ます。日本でもアデノウイルス41型による急性胃腸炎がはやり始めた時に、重症の急性肝炎が増えるかどうかを、十分に注視する必要はあると思います。

次のページ
気が付かない患者も少なくない…