南野教授はこう続ける。
「憲法はそのときどきの多数派の勢いで改正してしまうことのないよう、あえて法的に厳しい足かせを設けています。コロナ禍の経験から緊急事態条項を憲法に盛り込むべきとの主張もありますが、冷静に考えれば現行の法律の中で対応できます。9条についても、日本を守るためには自衛隊の配備や運用の在り方を変えることで対応できることが多い。ウクライナから得られる一番の教訓は、軍隊があっても攻められると多くの人が亡くなるという事実です。他国の攻撃を受けないことに政治家は傾注すべきです」
9条に自衛隊を明記する改憲は現状追認にすぎない、との見方についても南野教授は「全く変わらないということはあり得ません」と指摘する。
「明記することで専守防衛に徹する、自国防衛のための必要最小限の実力組織にすぎないとされてきた自衛隊の性質にも影響が及ぶと思います。自衛隊をあえて軍隊と区別することで、海外派兵の一定の歯止めにもなってきました。そこはよくよく議論を重ねるべきです」
夏の参院選後は、衆院の解散がなければ国政選挙が行われない「空白の3年間」が待っている。南野教授はこう熟慮を促す。
「有権者にはより慎重な判断が求められています」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2022年6月6日号より抜粋