7月10日に投開票が行われる見通しの参院選。外交や安全保障への関心が高まる中で、改憲の行方はどうなるのか。AERA 2022年6月6日号の記事から紹介する。
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報道向けのデータ収集を行うJX通信社(東京都千代田区)の調査でも、2月のロシアによるウクライナ侵攻後、外交・安全保障政策を重視する世論の傾向は顕著だという。4月の調査で「有権者が重視する政策」は多い順に、「社会保障・医療・介護」(39.6%)、「経済・雇用」(22.1%)、「外交・安全保障」(15.4%)など。同社が「選挙ドットコム」と共同で毎月実施している調査では、重視する政策課題として「外交・安全保障」を挙げる割合が3月は12.2%、4月は15.1%と増加傾向にある。昨年11月の同じ調査で「外交・安全保障」は7.8%だったのと比較しても関心の高さがうかがえる。一方、各種世論調査で改憲賛成派が増えている「憲法改正」については4月の調査で2.3%と、大きな変化は見られないという。
とはいえ参院選後は、自民や維新といった「改憲勢力」の議席増が見込まれる。自民と維新が連立を組む可能性はあるのだろうか。
「自民からすれば、政策面では公明よりも維新の方がくみしやすいのは事実です。しかし、自民にとって公明は選挙で票を借りられる生命維持装置になっており、それを自民が手放すとは考えにくい。維新は地方では集票力がありませんから、公明の組織票を肩代わりできません。改憲の過程においても公明がブレーキ役になるのは間違いないでしょう」(関西大学の坂本治也教授)
憲法改正には冷静な議論が必要だと唱えるのは、九州大学の南野森教授(憲法学)だ。
「ウクライナ侵攻は泣きたくなるし怒りたくなるし、怖い。でもそういう負の感情を利用して、現状のままだと危険だという主張には注意が必要です。軍事紛争は憲法上の規定ではなく、隣国との地理的関係や歴史的背景に起因します。紛争を抑止するのは軍事力よりも、外交や政治力に依存します」