もうひとつ、ずっと違和感を抱きながらも「流されて」きたものがあります。それは「女子にも嬉しい」という表現です。前述の「超メガ盛丼」なんかでも、「ハーフサイズもあります」というナレーションに対し、必ず「それは女子にも嬉しい!」と叫ぶタレントがいますが、毎回イラッとしながら「そうね」と同調している自分がいます。「女子にも嬉しいサイズ」「女子にも嬉しい甘さ」「女子にも嬉しい宿」「女子にも嬉しい飲み屋」など、今や世の中のほとんどが「女子にも嬉しい基準」で動いているわけですが、その一方で「男女の性差に関する発言は慎め」というのですから甚だ困惑です。

 最悪なのは「ミッツさん、これなら女子にも嬉しいですよね?」などと、私がそれを背負わされる時。「ごめんなさい。オカマにはその気持ち理解できないんで……」と返すのにも今は逡巡しなくてはなりません。

 今日もテレビを観ていたら、「甘めのリキュールで色は爽やかなピンクのカクテル」か何かが紹介されており、反射的に目を閉じました。間髪入れずに「それなら女子にも飲みやすくて嬉しいですね!」というドヤ声が。しかしその声が想像以上に野太かったので目を開くと、画面に映っていたのはナジャ・グランディーバさんでした。私もちゃんと仕事します。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2022年6月3日号

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