『電波少年』で行っていたような挑戦的な企画は、当時のテレビでも公に認められていたわけではなかった。ただ、プロデューサーの土屋氏が腹をくくってそれを押し通していただけなのだ。

 今も『水曜日のダウンタウン』などを見ているとそれと同じ「におい」がする。制作者が過激さを求めているわけではないのだろうが、面白さを純粋に突き詰めていった結果、ほかの番組が踏み込まないようなところにまで攻めていく大胆不敵さを感じることがある。

 結局、テレビ番組の面白さは、個々の作り手がどこまで腹をくくれるのか、という属人的なところに還元されるのではないか。テレビ番組には多くの制作者がかかわっているものだが、1つの番組の「魂」のようなものを背負っているのは、たった1人のプロデューサーやディレクターだったりする。そのいびつさこそがテレビの魅力であり、希望である。

 あまり積極的に触れたい話題ではないが、フジテレビの新番組『呼び出し先生タナカ』の企画内容が『めちゃ×2イケてるッ!』の抜き打ちテスト企画と酷似していると騒がれた件は、守りに入った制作者の悪い部分が露呈した象徴的な事件ではないかと思う。

『めちゃイケ』の制作にも携わっていたスタッフが番組を作っていると報道された。仮にそうであれば「パクリ」ですらなく後ろ向きの「再生産」に過ぎない。これが『めちゃイケ』の焼き直しだと視聴者に批判されることを想定していなかったのだとしたら、あまりにも見通しが甘いと言わざるをえない。

 コンプライアンスが厳しくなっているというのは事実かもしれないが、現状でも意欲的な面白い番組がたくさんある以上、作り手がそれを言い訳にすることはできない。いい意味で我を押し通す制作者が好き勝手に作っている番組をこれからもどんどん見てみたいものだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

道理で笑える ラリー遠田
特集トップへ
[AERA最新号はこちら]