■孤独な「天才」から、真の「柱」へ
「強い柱」であるがゆえに戦場では「泣けなかった」煉獄と宇髄に対して、成長途中の蜜璃と無一郎は涙を乗り越えて、さらに強くなっていく。「生きる」ことを踏みにじられ、自分が何者であるのかを見失うことすらあった、2人の天才剣士はこの戦いで「真の柱」へと成長をとげる。
<任せといて みんな私が守るからね>(甘露寺蜜璃/14巻・第124話「いい加減にしろ バカタレ」)
<無一郎の…無は…“無限”の“無”なんだ お前は自分ではない誰かのために 無限の力を出せる選ばれた人間なんだ>(時透有一郎/14巻・第118話「無一郎の無」)
■「幸せになる」ために戦う2人
「刀鍛冶の里」での戦いが終わると、鬼と鬼殺隊との戦いは加速度的に激化していく。また、この時の戦いによって、蜜璃と無一郎が得た巨大なパワーは、彼らのその後の「運命」をさらに残酷なものへと変えていく。
「幸せになるために生まれてきたんだ」と人生の意味を見つけた時透無一郎。「私のまま」に生きることを願い、そんな自分を愛してくれる人を探す甘露寺蜜璃。彼らが背負う「傷」は大きく痛ましい。それでも、彼らは自分たちの“原点”を忘れることなく、戦い続ける。
<私が私のままできること 人の役に立てることあるんじゃないかな?>(甘露寺蜜璃/14巻・第123話「甘露寺蜜璃の走馬灯」)
<ねぇ 剣士になろうよ 鬼に苦しめられてる人たちを 助けてあげようよ>(時透無一郎/14巻・第118話「無一郎の無」)
2人は持って生まれた「天与の才」を多くの人を救うことにささげた。まるで、その先に待つ「運命」すらも引き受けるように、彼らは信じた道を進み続ける。
蜜璃と無一郎の雄姿がアニメでどのように描かれるのか、楽しみでならない。
◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。AERAdot.の連載をまとめた「鬼滅夜話」(扶桑社)が好評発売中。