しかし、ボンボン氏は、そのドゥテルテ大統領の政策継承を公約にしただけでなく、ドゥテルテ大統領の長女のサラ氏とペアを組んだ。これによって国民はボンボン氏を「ドゥテルテの後継者」と認めたのだ。ときには父にも逆らう気骨があるサラ氏は国民的人気者で、次の次の最有力大統領候補とみられている。

 前回16年の大統領選で、ドゥテルテ候補がジョークを交えつつ、対立候補を徹底的にこき下ろしたのと対照的に、ボンボン氏はロブレド候補をはじめ、対立候補の批判を一切、口にしなかった。候補者討論会にもすべて不参加を貫いた。

「父が独裁者であったこと、その息子であるがゆえに批判を浴びる存在であることは、ボンボン氏自身がいちばん知っていて、敵をつくることを避けた」(木場氏)ことが、その選挙戦略でもあった。

「ボンボン氏の父は悪いことをずいぶんしたが、過去のことだし、その罪を息子に負わせるべきではない」。マカティ市で家政婦として働く女性(57)は選挙期間中にそう話した。父は父、息子は息子として評価することをフィリピン人もわきまえている。

(石山永一郎)

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