「ムー」の担当者も、今回のコラボに手ごたえを感じたようだ。
「本誌1号の部数の倍以上売れています。これは、まだまだ『ムー』の読者を増やす余地があるということ。コラボをしたことで、コンパクトにまとまったムー的な情報を求めている読者の層があることを実感しました。今後はウェブなどで読みやすいスタイルの発信を増やすことで読者を拡大していきたいですね」
池田さんは、今回の試みで『歩き方』シリーズの汎用性の高さを認識したという。
「『○○の歩き方』の○○には何でも当てはまりますよね。さまざまなものとコラボすることで、ブランドの可能性をさらに広げていけると気がつきました」
さらにこう続ける。
「『歩き方』が書ける情報には限界があるんです。ガイドブックなので、通説に沿った内容にならざるを得ない。要するに“表世界”しか紹介できない。『ムー』が“異世界”を担当してくれたことで読者が想像力を働かせる余地ができ、おもしろい書籍になったと思います」
今年のゴールデンウィークは3年ぶりに行動制限がなかった。今後の感染状況にもよるが、海外への旅行客はこれから増えるだろう。『歩き方』編集部でも、今夏にニューヨーク編やオーストラリア編などの改訂版を出せるよう、編集作業を進めているという。
「やっと……!!という感じですね。ここまで苦しかったですから」。池田さんの顔にはうれしさがにじむ。
一方で、本書のような作品も出していく予定という。『地球の歩き方 ムー』の続編はあるのか。
「まだ具体的に進んでいるわけではありませんが、日本編を出したいと考えているところです」と池田さん。最後に、新井社長から聞いたという、ある言葉を教えてくれた。
「新井はよく『まぜるな危険をまぜてみるとおもしろいものができる』と言っています。今回はまさにそれですね」
コロナで表世界が閉じるなか、一方では異世界への扉が開いていた。(本誌・唐澤俊介)
※週刊朝日 2022年6月24日号