そんな“水と油”の両者を結びつけたきっかけは、新型コロナウイルスの流行だった。出入国在留管理庁によると、2020年、海外に渡航した日本人の数は前年の約16%に激減。影響をもろに受けた『歩き方』の売り上げは、前年比のわずか1割にまで落ち込んだという。
こうした状況下で『歩き方』の版元、ダイヤモンド・ビッグ社は翌年1月、学研プラスに『歩き方』の出版事業を譲渡し、新体制の下で『歩き方』の社長に新井邦弘氏が就いた。同氏のトップ就任が『地球の歩き方 ムー』誕生のきっかけとなる。
この本を編集した『歩き方』の池田祐子さんが語る。
「実は、新井はもともと『ムー』の編集部員だったんです。それで『ムー』の三上丈晴編集長とも面識があったそうで、つてをたどり、学研グループ入りした直後にムー編集部に『何かできないか』と声がけをしていたみたいで。その縁が大きかったですね」
当初は雑談ベースだったものを、昨年4月に池田さんが企画書に落とし込み、両者で内容を詰めていった。
まず取りかかったのが掲載するスポット選びだ。普段『歩き方』を制作しているメンバーでアイデアを出し、同書のベテランライターが該当地の詳細に健筆を振るった。
これを土台として、今度はムー編集部が古代遺跡やオーパーツ(その時代の技術では存在するはずのないもの)など、得意の“異世界の情報”をまぶしていったという。
企画が動き出してから、書籍に結実するまで約1年。両編集部とも当初はここまで売れるとは思っておらず、反響の大きさから発売直後に重版を決めたが、1カ月半ほどは書店やネットで品切れが続いたという。
「ムー」編集部によると、同書の読者(紙媒体)は40~50代の男性が7割ほどを占める。『地球の歩き方 ムー』も同じ層に売れていると思いきや、池田さんからは意外な答えが返ってきた。
「もちろん『ムー』の読者にも手に取っていただいているのですが、特に20代女性が買っていて、若い層に人気なんです。通説にしばられず、『もしかしたらこんなこともあるかも』と、豊かな想像力でムー的な説を楽しめるやわらかい感性が、本書と合ったのかなと思っています」