「すごいなあ。大臣が僕たちのことを気にしてくれた」「成功だと思った」
栃木県日光市に住む双子の小学5年生のゆうやくんとれいや君は、すこし恥ずかしそうな様子を見せながらも嬉しさを隠さない。
6月14日の夜。ふたりは、YouTubeでこの日に行なわれた末松信介文部科学大臣の閣議後の記者会見の映像を見ていた。ゆうや君とれいや君は、信じられなかった。なんと会見で末松大臣が、「驚きました。素晴らしい取り組みだ」と、自分たちの「商品」を絶賛しているのだ。
大臣が指したのは、ランドセルを軽くするためのスティック、「さんぽセル」のことだ。脱ゆとり教育に伴い、こどもたちは教科書やタブレットの詰まった重いランドセルを背負わせられる子どもたちの状況は、深刻な社会問題となっている。「さんぽセル」は、重いランドセルを少しでも軽くしたいと今年4月に発売された商品だ。一見、ただのスティックだが、ランドセルにタイヤをつけキャリーケースとなるすぐれものである。
実は、この商品を開発したのは、冒頭のゆうや君とれいや君を含む栃木県日光市の小学生らだ。小学3年から6年生のこどもたちと大学生らが中心となって開発、発売したもので、すでに特許も申請済みである。
子どもたちは、この「さんぽセル」を大人にプレゼントする企画を練った。6月13日、大学生の協力を得て、ホームページに、「内閣総理大臣」「文部科学大臣」、全国の「市長」「校長先生」が、「さんぽセル」のプレゼントに申し込むことが出来る応募フォームを作成。翌14日の記者会見では、子どもたちが末松大臣にも「文部科学大臣の方はこちら」と末松大臣専用の応募フォームを作成していることについて記者から質問が出た。すると末松大臣は、商品の写真を確認したと話したうえで、「ひくこともできるし、背負うこともできるような非常に便利なもの」と絶賛。さらに、こうも続けた。
「驚きましたのは、小学生自ら重いランドセルをなんとかしたいと発案した製品であるということ。子どもたち自身が課題を見つけ試行錯誤し、大人の協力をえてこうした一つの解決策を見いだしたのは素晴らしい取り組み。文科省も皆そう思っています」
ゆうや君とれいや君は、末松大臣の会見を確かめて、「成功」という言葉を口にした。その言葉が含むのは、褒められたという単純な喜びだけではない。ここに来るまでの「騒動」を乗り越えたからこそ、口からこぼれた安堵でもあった。