巨大地震が発生したとき、私たちはどう行動すればいいのか。通勤などで移動の多いビジネスパーソンだからこそ、知っておきたいことがある。四つのプロセスを専門家に聞いた。AERA 2022年6月20日号から。
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駅のロータリーにあふれる人、人、人。
昨年10月7日夜、関東地方で最大震度5強の地震が起こった。JR山手線ほか各線が運転を見合わせ、帰宅の足を失った多くの人がタクシーを求めて列を作った。当時、品川駅にいた男性(38)は言う。
「深夜1時になっても列はほとんど動かず、あきらめて徒歩で帰ることにしました」
横浜市鶴見区の自宅まで16キロ程度、スーツに革靴で幹線道路を歩き続けた。ようやくたどり着いたのは午前4時過ぎだ。
「靴ずれはするし腹は減るし、歩き疲れてヘトヘト。途中でスマホの充電も切れました。幸い道には迷いませんでしたが、地震に対していかに準備不足だったか痛感しました」(男性)
距離が遠く帰宅を断念した人と、長距離でも徒歩で帰ろうと試みる人をあわせ、帰宅困難者という。2011年の東日本大震災や18年の大阪北部地震などで発生し、特に前者の場合、その数は首都圏だけで515万人にのぼった。
■事前に想定しておく
大地震はいつ起こってもおかしくない。道路が不通になったり、火災やガス漏れなど二次災害が起こったりする危険性もある。正しく行動しないと、帰宅困難どころか、命の危険すら考えられる。
大地震発生時、私たちはどう行動すればいいのか。
防災に詳しいNPO法人プラス・アーツ(兵庫県)の永田宏和理事長(53)は、事前に考えておく重要性を指摘する。
「通勤も含め移動の多いビジネスパーソンは、特に準備と心構えが必要です。さまざまなケースを想定しておかないと、いざという時に混乱して正しい選択ができなくなってしまいます」
永田さんによると、とるべき行動には優先すべき順番があるという。発災後、避難先へ向かうまでの行動は、四つのプロセスに分けられる。
まずは、地震発生からの約2分間。揺れのなか、優先すべきは「命を守ること」だという。
「震度6弱の揺れとなると、ただ立っているのも難しい。被災した方々が口を揃えるのは、『揺れている時は何もできない』ということ。頭と太い血管を守ることに専念すべきです」
緊急地震速報を受信したり、小さな揺れを感じたりしたら、頑丈な机の下などに潜りこむ。そんな場所がない場合は、しゃがんで四つん這いになり頭を守る“ダンゴムシのポーズ”をとるといい。最低限の対策として、自宅の家具は固定しておきたい。