幅広いフィールドでの活動が自分の糧になっていると語るキタニさん(撮影:張溢文)
幅広いフィールドでの活動が自分の糧になっていると語るキタニさん(撮影:張溢文)

「大学ではほとんど友達ができなかったですね(笑)」というキタニだが、講義にもしっかり出席していたという。

「“美学芸術学研究室”というのは、“美しさとは何だろう?”という視点で一次元上から芸術を見るようなところだったんですが、その他に哲学や世界史など、興味のある講義を幅広く取ってました。友達がぜんぜんいなかったから、テスト期間はつらかったですけど(笑)、僕、ずっと特待生だったんですよ。めちゃくちゃ親孝行じゃないですか?」

■就活をするように“職業作家”に

 同級生が出版やテレビ業界に就職していくなか、キタニはもちろんプロのミュージシャンとしての将来を模索。大学3年のときに音楽プロダクションの門を叩き、“職業作家”(※音楽をアーティストやクライアントに提供する作曲家)としてのキャリアをスタートさせた。

「職業作家になりたくて、今の事務所に履歴書とデモCDを持っていったんですよ。なぜかスーツを着て、長髪をひとつにまとめて行ったんですけど、『そんな恰好しなくていいのに』と言われました(笑)。大学卒業後に契約してもらえることになって、すぐに仕事をはじめました」

 大学卒業後は、楽曲提供、バンド活動、そして、“キタニタツヤ”名義のアーティスト活動を同時進行させ、プロのミュージシャンとして着実にステップアップ。2020年にアルバム『DEMAGOG』でメジャーデビューを果たした。その後もソロ活動に専念するのではなく、アイドルへの楽曲提供など、幅広いフィールドで才能を発揮している。

「いろんな活動をするほうが、メリハリが出ますからね。違う現場で経験したこと、学んだことを自分の作品に反映できるし。自分の活動以外のことをやらないのは、勉強できる機会を失っている気がします」

 今年5月にはニューアルバム「BIPOLAR」(読み:バイポーラ―)を発表。ドラマ『ゴシップ#彼女が知りたい本当の〇〇』主題歌の「冷たい渦」「プラネテス」、漫画『BLEACH』(『週刊少年ジャンプ』)生誕20周年を記念した原画展のために制作された「タナトフォビア」「Rapport」などを収録した本作。中心となるテーマは、“対極”“双極”だ。

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楽曲には東大の受業の影響も