そんな感じだから、一回のロケで、いったい放送何本分になるのかは毎回分からないらしい。撮れ高次第で変わるって、そんなやり方で局の編成とかは大丈夫なのかな(笑)。
そんな風にたまに心配になったりもするけど、ローカル番組は、ボクが中心となって、いろんな人とコミュニケーションをとる機会も多いから、いつもと一味違った経験ができて新鮮な気持ちにもなれる。
全国放送の番組では、隠しカメラで盗撮されたり、「ギャー!」とか「ワー!」とか、ボクがただただ驚く「ドッキリ」のような仕事も多いからね。そのイメージが強すぎたせいか、以前、ロケ中に「クロちゃんって普通に会話できるんですね」ってびっくりされたこともある。「どういうこと!」って一瞬困ったけど、あとから振り返ると、そりゃ無理もないかも……と思ったりもする。
だって、ボクはローカル番組を始めるまで、街ブラのロケとかはほとんどしたことがなかった。ましてや、ボク一人で一般の方たちと積極的に絡んで会話する機会なんてなかった。繰り返しになるけど、ボクがテレビに映る時といえば、盗撮やドッキリが主で、それ以外も、女の子の前でだらしなかったり、毒を吐いたり、うそをついちゃったりする姿をみせてばかりだったからね。
一時は、「モンスター」なんてひどい呼び方で紹介される機会も多かったし。もしかすると、一般の方たちは、ボクを本物の「モンスター」と思っていた可能性もあるよね(笑)。あるいは、カッパやネッシー、ツチノコのような空想上の生き物みたいに捉えられていたような気さえする。「こんな生き物、ほんとうに実在するの?」みたいな(笑)。だから、普通に会話するボクを見て、びっくりしたんじゃないかな。ボクのこと相当怖かったんだろうね(笑)。おりの中に入っていない熊に接するみたいな感じだったのかも。思い返してみると、番組開始当初は、ロケしていても全然ボクに近づいてきてくれなかった。なぜか、絶妙な距離をとられていた。まだコロナ禍じゃなかったのに「クロちゃんディスタンス」がうまれていたのはこのせいか。
そういう意味では、ローカル番組のおかげで、ボクは、やっと"人間"になれたのかもしれない。ありがたいことに、今では、いろんな人が気軽に声をかけてくれるようになったからね。よかったよ、ほんと。
ボクが、このまま"人間"として存在しつづけるために、ローカル番組はもう欠かせないから、需要があるかぎりは、ずっと続けていきたいなって思っている。
それに、昔と違って、今はTVerのような動画配信サービスも増えたし、ローカル番組を全国どこにいても見られるようになったのも魅力だよね。視聴回数などが増えれば、それが番販にもつながったりもするし。ローカル番組っていう定義は、もうとっくに変わってしまっているのかもしれない。
全国47都道府県どこでもOK!
ローカル番組のオファー、お待ちしているしん。
(構成/AERA dot.編集部・岡本直也)