「ふるさと納税」の返礼品問題が相次いでいる。返礼品の調達額などでルールから逸脱していたとして指定を取り消された兵庫県洲本市。返礼品の多くが、隣の淡路市とまったく同じ品目であることなどが内部文書から明らかになった。一方、寄付者から返礼品を受けてキャッシュバックするという業者も現れ、総務省は6月23日、全国の自治体に対し、適正な運用を求める通知を出して注意を促した。とはいえ、自治体にとっては貴重な収入源。競争激化は収まる気配が見えない。
年を追うごとに右肩上がりで額が増していくふるさと納税。総務省によると、2020年度実績は6724億円と、前年度の4875億円から38%弱アップした。
競争も激しく、各自治体は競って新たな商品やアイデアを出し続けている。
例えば、兵庫県加古川市は、ふるさと納税で100万円以上を寄付した人への返礼品として、将棋のトップ棋士で加古川観光大使の久保利明九段(46)か、稲葉陽八段(33)との対局体験を贈ると21日に発表した(各先着2人)。
福井県あわら市は、返礼品に市内ゴルフ場で使える「電子感謝券」を取り入れ、6月13日から全4カ所での利用が可能になった。
他にも店舗型ふるさと納税など、物品にとらわれない「返礼品」もいろいろと出ている。なかには、「物価高の今こそ、上手に使おう」という誘いもある。
そうした状況のなか、ふるさと納税サイト「キャシュふる」が8日にはじめたのは、ふるさと納税で現金のキャッシュバックが受けられるというサービス。返礼品に興味がなく不要という人もなかにはいる。「キャシュふる」を通じてふるさと納税すると、返礼品やそれを受け取る権利を第三者に転売。その代わり、寄付者には寄付金の2割をキャッシュバックするというものだった。
しかし、金子恭之総務相は10日、
「寄付者が返礼品の代わりに現金を受け取ることは制度の趣旨から大きく外れたものであると考えている。現在、自治体において、一定のルールの下で取り組んでいただいており、事業者及び自治体に対しては、このような経緯と制度の趣旨を踏まえた対応をお願いしたいと考えております」