「いつかフィンランドで働きたいから、寿司職人を目指す」――北欧好きが高じて、会社員生活のかたわら、寿司職人養成学校に通うことにした女性がいます。
それが北欧愛あふれるSNSアカウントで人気の「週末北欧部 chika」さん。著書の『北欧こじらせ日記』は、彼女が夢を追い求める姿をフィンランドという国の魅力とともにオールカラーで書き下ろしたコミックエッセイです。
大学3年生のときに初めてフィンランドを訪れて以来、年に一度は通っているchikaさん。社会人2年目で転職し、今の会社は9年目になります。その間、中国勤務なども経験しますが、いつも彼女の心にあったのは大好きな北欧。「私、やっぱり......自分の夢が好きだな......」と実感し、フィンランドで食堂を開きたいという気持ちを強くするのです。
とはいえ、フィンランド語もできない、就労VISAを取れる資格もないchikaさんにとって、フィンランドに移住するのは至難の業。そこでchikaさんが見つけたのが、日本人が優遇される寿司職人という仕事でした。「世界中どこにいても自分らしい仕事をする」という想いを叶えながら、大好きなフィンランドへの道もひらけるということで、会社員生活のかたわら、夜間の寿司職人養成学校に通うことを決めます。
「好き」な気持ちがあれば、寄り道をしたっていつからでも夢を叶えることはできる――。chikaさんのそんな姿を、きっと誰もが応援したくなるはず。それとともに、夢を叶える方法やキャリアの作り方などが参考になるのではないでしょうか。
フィンランドという国の魅力もギュッと詰まっている同書。「フィンランドに行くと必ず買うお気に入りのお土産10選」や「初日のお決まりルーティン」などはガイドブック感覚で楽しめますし、フィンランド人との交流のエピソードはほほえましいです。chikaさんの描くイラストもほのぼのとした素朴なタッチで、彼女の人柄がにじみ出ているかのよう。北欧好きな人はもちろん、じわんと温かな気持ちになりたい人にもおすすめの一冊です。
なお、同書が出版されたのは2022年2月ですが、翌月の3月19日、chikaさんのSNSアカウントで「フィンランドで寿司職人になるという夢が叶うことになりました」とのお知らせがありました。ついに長年の夢を実現したchikaさん。就職にいたるまでの過程やフィンランドでの新生活については、『北欧こじらせ日記』の続編で見られる日がくるかもしれません。
[文・鷺ノ宮やよい]