ソ連がアフリカやそのほかの開発途上国でこの話を広めたのには、おそらく二重の動機があった。ソ連の諜報機関は、反米感情に火をつけて、アメリカ軍に対する不信感を植えつけたかった。また、ソ連が当時進めていた生物兵器製造計画(現在では詳細な報告書がある)が明らかになって、国際的な非難の的になったとき、アメリカのせいにできるようにしたかったのだろう。

 ソ連崩壊後に誕生したロシアは、積極的に情報収集活動をしてきた。諜報機関・外交機関・国の統制下にあるメディアが、嘘の話をSNSを使って拡散している。エイズの話をでっちあげたときのように、COVID-19はアメリカの生物研究所でつくられたものだと主張した。

 また、クリミアの不法な併合、ウクライナの領土保全の侵害、マレーシア航空17便撃墜、ウクライナを標的とした度重なるサイバー攻撃、旧ユーゴスラビアの小国モンテネグロのクーデター工作、西側の選挙の妨害などをプロパガンダによって正当化している。プロパガンダはどれも敵対的だ。

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