早期退職しても老後を楽しむための
具体的な支出見直し方法

 ここからは、具体的な支出の見直し方法をお話ししながら、試算も行っていきましょう。

 相談文には「仕事のプレッシャーで心身ともに疲弊している」と書かれているので「58歳以降の収入を増やしましょう」とは言いにくい状況です。なので、支出を大幅に見直すことにします。

まずNさんの小遣いは6万円から3万円へ減額。次に家族の携帯利用料は格安プランなどに見直し、子どもの通信費用は子どもに負担させるとして3万円から1万円にしましょう。最後に食費は夫婦2人になるので10万円から6万円にします。この3つの見直しで月9万円の減額になります。

 また、夫婦の保険が月5万円と書かれていますが、保障を得る目的なら子どもの教育費負担はないので不要です。解約返戻金を老後資金に回すために加入しているのかもしれませんが、保障は不要なので保険は払い済みにした方が良いでしょう。払い済みにすれば保険料の5万円も削減できます。

 小遣いの減額、通信量の削減、保険の解約を合計すると、月14万円、年間で168万円も支出額を減額できます。

 支出削減をした場合のNさんの58歳以降の収支を試算しましょう。

 収入は186万円、支出は473万円−168万円=305万円。つまり、赤字額は119万円です。65歳までの7年間では833万円の赤字になります。

 次に、65歳時点の金融資産額を試算しましょう。まずは、58歳時点の金融資産額から58~65歳の間の赤字額を差し引きます。4037万円−833万円=3204万円です。ここから、その他支出(車の買い替え、2回の海外旅行費用)を差し引きます。3202万円−500万円=2702万円が、65歳時点の金融資産額です。

 65歳以降の収支を確認しましょう。収入は年金のみで255万円、支出は変わらず305万円とします。赤字額は50万円です。

 金融資産額は2702万円あるので、海外旅行費用などの一時的な費用を考えなければ、毎年50万円ずつ取り崩す場合54年間もちます。年齢で言うと119歳まで蓄えはもつことになります。仮に、65歳以降に1回当り50万円の海外旅行を3~5回行ったとしても110歳までは金融資産が底を尽くことはないでしょう。

 子細な家計データの記載がないため推測を交えた試算になりましたが、58歳以降の支出を大幅に見直しすれば、老後に過度な不安を持つ必要はないと思います。試算ではNさんが65歳のときに奥様もパートを辞める形としました。しかし、収入を減らしたとしても65歳以降も社会とのつながりを考えて働けば、支出の削減は少なくて済みます。その上で支出を大幅に削減すれば、収入増分はNさん夫婦の余裕資金になるため、老後の楽しみ費用として使うことができます。

 簡単な試算になりますが、こちらをベースにして支出の削減や働き方、あるいは海外旅行などを楽しむ費用をどう考えればよいのかの参考にしてください。あと1年間は短いようで長いですから、体調面、特にプレッシャーやストレスなどでメンタル的なダメージを被らないように注意してください。

(ファイナンシャルプランナー 深野康彦)

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