コロナが流行する以前であれば、子どもたちは友人と体をくっつけ合いながら思いっきり遊んでいたはずだ。

「そうした“楽しい”感覚や経験が記憶として脳内に残っています。しかし、この1年で、『給食は黙って食べよう』『友達と密にならない』といったルールが求められるようになった。密や接触に楽しい記憶もつ子どもたちにとって、それを我慢しなければならないストレスはかなり大きいはずです」

長引くマスク生活で
子どもたちにしてあげられること

 では、長引くマスク生活で、これまでとは異なる環境で育っていく子どもたちに対して、周囲の大人はどのようなことを意識すればいいのだろうか。

「ご家庭でお子さんと対面して豊かな表情を共有する、体を触れ合わせる時間をなにより大切にしてください。家族内では、マスクをはずしておられる、密をさけずにいることが多いと思います。家族全員で協力して、たくさんの表情を見せて、体を使ったコミュニケーションを子どもたちに提供していきましょう。家庭内で、お子さんの学びの機会を増やし、脳の発達を支える試みです。5分でも10分でも長く、子どもたちとフィジカル空間で触れ合ってください」

 スマホやテレビなどでもさまざまな人の顔を見せることはできるが、幼い赤ちゃんにとっては、画面越しに表情を見るだけでは学習の効果はあまり期待できないという。顔を見るという体験に、“楽しい・うれしい”という感覚が体を通して結びつかない限り、相手の感情を理解することにはつながらない。

「『マスクをしていても目でコミュニケーションはできる』と主張する人もいますが、それは既に完成された脳を持っている大人にとっての話です。これから多くの感情や人との付き合い方を体の反応、経験を通して学んでいく子どもたちにとっては、目だけでコミュニケーションすることはきわめて難しいのです。保育、教育現場など、感染対策との両立を図りながら学びの機会を提供していくことが求められる場合は、たとえば表情が見えやすい透明なマスクを使うことなども有効かもしれません。ただし、家庭内で対面でのコミュニケーションがしっかりできていれば、過度に不安に思われる必要はないと考えています」

 現代の子どもたちは、激変する環境のなかでどのように脳を発達させ、育っていくのだろうか。マスク生活は、子どもにとっては大人以上に感情を理解・表現したり、コミュニケーションしたりすることが難しいという事実をしっかりと認識したうえで、「子どもにとって必要な」新たな生活様式を考えていくべきである。

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