いったい、いつ韓国に賃金で逆転されたのか。前述の通り、日本の賃金は過去20年間で0.4%しか増えていない。これに対して韓国の賃金は43.5%伸びている。この結果、15年の時点で韓国に逆転され、その後も差は開く一方だ。
下図は、日米欧主要7カ国と韓国の平均賃金の推移を過去20年間で見たものだ。韓国だけでなく、米国やカナダ、ドイツなども賃金は顕著な右肩上がりで伸びている。「昇給ゼロ」状態なのは日本とイタリア(マイナス0.4%)だけである。
どうして、日本は賃金が上がらない国になってしまったのだろうか。その主な理由として、五つの点を指摘することができる。
一つ目はバブル崩壊やリーマンショックなど大きく景気が落ち込んだときに、日本企業は労使が協調して雇用維持を優先し、賃金を抑制してきたことだ。
人件費を抑え、増加した利益を内部留保としたことで、リーマンショック後の資金ショートも免れた。この経営側の成功体験も賃金を抑制し続けるインセンティブになっているだろう。
二つ目は雇用を維持しながら、賃金を下げられないこと。これも経営者が賃上げに慎重になった理由として挙げられる。
景気後退時に、賃金を引き下げようとした企業はあった。しかし、「賃金引き下げは労働者にとって不利益変更であるとして、経営側が敗訴する判決が相次いだ」(佐藤純・青山人事コンサルティング代表取締役)。
いったん賃上げをすると業績悪化時に引き下げて、コスト削減をすることができないと多くの経営者が考えた。業績がいいときは賞与で払い、ベースアップはせず定期昇給のみにしようという行動が主流となった。
ベースアップがなければ、同じ年齢、同じ役職といった同一条件の労働者の賃金が上がらない。定期昇給だけでは、平均賃金は上昇しない。