
東京パラリンピックは8月30日、ボッチャ個人戦(BC2)の1次リーグがあり、廣瀬隆喜(36)が出場する。AERA2020年2月10日号で豊富を語ったインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。
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会場に響いたおたけびが、日本のダブルエース復活の狼煙だ。2019年12月、日本選手権決勝。最終4エンドで1点を追う廣瀬隆喜は、世界ランキング2位の杉村英孝が目標球に2球寄せた後の3投目、密集した球の上へ転がした。球は杉村の球と目標球との隙間へ収まり、2点を奪って逆転優勝を決めた。
リオで日本に銀メダルをもたらした立役者だが、その後の国際大会では結果が残せずに世界ランクは23位と杉村に水をあけられてきた。廣瀬はこの間、用具や競技環境を一新。まずフレームの剛性を高めた競技用車いすを開発し、投球時のぶれを軽減した。18年初めからはアナリストやコンディショニングスタッフ、栄養士ら専門家でつくる「チーム廣瀬」によるサポートを受け始めた。食事の改善で集中力が続くようになり、障害の特性で、疲労や緊張などで起こりやすい筋緊張も少しコントロールできるようになった。転がりやすさなどが違う3種類を使っていた試合球は6球とも同じものに統一し、制球力を磨き上げた。
「変えるのがいいのか、すごく迷いました。でも、ようやくこれまでやってきたことがプレーに表れてきた」
リオ大会後に人気が出始めたボッチャを「草野球のようにどこでも楽しめるスポーツにする」のが廣瀬の夢だ。ミリ単位の繊細なコントロールと、一投で局面を変えるパワーショットを兼ね備えた廣瀬は、競技の魅力を体現する伝道師として、表彰台の一番高い場所を目指す。
(編集部・深澤友紀)
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■ボッチャ
重度の脳性まひなど両手足に障害がある人向けに考案されたパラ独自の競技で、ボッチャはイタリア語でボールの意味。先攻の選手が白いジャックボールを投げ、それを目標球にしてそれぞれ赤と青の6球ずつを投げ合い、白球にどれだけ近づいたかで点数を競う。「陸上のカーリング」とも呼ばれる。個人戦のほかペア、団体戦がある。
※AERA2020年2月10日号に掲載