かわむら・りょう/1989年、大阪府東大阪市生まれ。アクサ生命保険所属。5歳でぶどう膜炎を患い視力が低下。23歳のときに全盲に。筑波技術大学に入学後、ブラインドサッカーと出合う。2013年、代表に初招集されたブラジル戦で初ゴールを奪う。16年から日本代表主将(写真/写真部・東川哲也)
かわむら・りょう/1989年、大阪府東大阪市生まれ。アクサ生命保険所属。5歳でぶどう膜炎を患い視力が低下。23歳のときに全盲に。筑波技術大学に入学後、ブラインドサッカーと出合う。2013年、代表に初招集されたブラジル戦で初ゴールを奪う。16年から日本代表主将(写真/写真部・東川哲也)
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 東京パラリンピックは8月29日、視覚障害者の5人制サッカーが始まり、1次リーグA組の日本はフランスと対戦する。AERA2019年5月13日号で力強く語ったエースストライカー・川村怜(32)のインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。

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 目を閉じてみてほしい。その真っ暗闇の世界で、声や音を頼りに全力疾走し、敵をかわし、パスを受け、目の見えるゴールキーパーから得点を奪うことが、あなたにはできるだろうか。

 日本代表のエースストライカー、川村怜でさえ、初めて競技と出合った18歳のときは、どこを向いているかもわからなかった。それを、日常生活の中でも神経を研ぎ澄ませて音や気配を感じる訓練を積んで空間認知能力を高め、今では「音で見る」ことができるようになった。

「敵のゴール裏にいるガイド、ゴールキーパー、センターライン近くにいる監督、この3カ所からの声を基準にしてピッチの空間を360度イメージし、自分の位置や方向を把握します。仲間や敵の足音や声を聴くと、人の姿が浮き上がってくる。みなさんは視覚で、僕らは聴覚でイメージする。情報源が違うだけですよ」

 大好きなサッカーを一度は諦め、中学・高校では陸上に打ち込んだ。中距離走で鍛えたスピード、苦しい状況でもギアを上げられる心身の強さを手に入れ、再びピッチに戻ってきた。

 音や声で自分や他者の位置、互いの距離を把握するだけでなく、刻々と移り変わる展開も予測して動かなければならない。音の聞こえ方は会場や天候によって変化する。風が強いと音が流れて、いつもははっきり捉えられる敵や味方の像がぼやけるし、観客が大勢入れば音が吸収されて反響も変わる。適応力が必要だ。

「もっともっと能力を極めていきたい」
 
(編集部・深澤友紀)
 
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■ブラインドサッカー

 視覚障害者の5人制サッカー。ゴールキーパーは目が見える人や弱視の人が担当し、ほかの4人は全盲でアイマスクを装着。フットサルと同じ広さのコートで、転がると音の出るボールや敵陣ゴール裏に立つ「ガイド」、キーパーなどからの声を頼りにゴールを狙う。日本代表は現在世界ランク13位で、パラリンピック出場は東京が初。

※AERA2019年5月13日に掲載