「ラインアップに、シークレットのみならず、ゴールドやシルバーなど『激レア』も入れた遊び心も、コレクター欲をくすぐりました」(同)
ネコのペンおきの発売元、クオリア代表取締役の小川勇矢さん(33)を訪ねた。
■タマのポーズが原点
「きっかけは、子どもと見ていたアニメ『サザエさん』のエンディングのタマ。あの姿を、ガチャ化できないかと思いついたんです」
誰もが一度は見たことのあるフォルムだから、多くの人に親しみやすいはずだ。実用性もほしいから、ペンや鉛筆を持たせたらどうだろう。
「ガチャガチャだから安っぽい、と思われるのは絶対に嫌でした。買った人に『すごいな』と驚いてほしいんです」(小川さん)
デザインは同社のデザイナーが手掛けた。イラストを立体化するうえで、「かわいい」はとことん追求した。
ずらりと並ぶ実物を前に「確かにかわいい」と感心していると、意外な秘密を聞いた。ネコたちは、左右対称ではないのだという。
「左目と右目の大きさが違って、左目のほうが少し小さい。口元のマズルは左側が少し下がっています。試作して、そのほうが『かわいい』とわかったからです」(同)
■黄金螺旋を続々発見
自立の安定性も試行錯誤を重ねた。背筋と臀部にかけての曲線、張り出した腰、きゅっと引き締まったくるぶし。完璧な肉体美がそこにはある。
「僕自身、サッカーをやっていたんで、筋肉にはこだわりがあるんです」(同)
その成果か、ペンやイヤホンのみならず、隊列を組めばスマホだって持ち上げられる。かなりの力持ちなのだ。
さて、ネコのペンおきに出会ってから、思っていたことがある。この安定感と美しさは、人類が最も美しいと感じるという、あの黄金比に起因しているのではないか。
美術に明るい友人に依頼すると、ネコのペンおきのフォルムに隠された黄金比を発見してくれた。なんと、至るところに黄金螺旋がしっかり当てはまっているではないか!
いま、机の上には力強く空を支える白猫と三毛猫がいる。視界の隅に入るだけで、鼓舞されるような気持ちになる。取材後にもう二回しし、自宅にもネコが増えたことは秘密だ。
(編集部・熊澤志保)
※AERA 2021年7月12日号