「読書とは、インプットではなく、スループットだ」
【写真】壁がすべて書棚に覆われ…立花隆さんの仕事場「知の要塞」が写ったAERAはこちら
4月30日に急性冠症候群のため死去していたことがわかったジャーナリストで評論家の立花隆さん(享年80)は、2001年7月9号の「AERA」で自身の読書のあり方をこう語っていた。
ときの首相の退陣につながった「田中角栄研究」などの調査報道があまりに有名だが、それ以外にも経済や医療や宇宙など、さまざまなテーマで次々とベストセラーを生んだ。
本を愛し、本に囲まれる生活を送っていた「知の巨人」の読書とは、いったいどのようなものだったのか。当時61歳だった立花さんの読書術を再掲する。
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立花隆さんが、近著『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』で、速読術を披露した。
「その日、読まねばならない本が5冊あれば、全部を読む。10冊あっても、無理して読む」
という達人の教えである。
――本当にそんなに読めるの?
多くのひとが抱いてきたこの疑問に、実践的なテクニックを列挙して答えている。ではまず、そのポイントを見ていこう。
最初に、立花さんは、速読できる本とできない本を区分けしている。趣味で楽しむ小説などに速読は不要だ。仕事のために、分厚い専門書から必要な情報を取り出さねばならない。そんな場面こそ、速読の出番だという。
■パッパッパッのリズム
続いて、こんな手順をあげる。
(1)深く意味がつかめなくても、とにかくサァーッと目を走らせる。
(2)次に、本の頭に戻り、パラグラフ単位にもう少し細かく読む。
(3)流れを把握できたら、あとは気になる箇所に戻りながら、さらに読みを重ねていく。
これが、立花式だ。大切なのは、その時々で柔軟に、自分で(1)~(3)の配分を決めること。3段階にもこだわらない。
さらに、そのための具体的な読み方も示した。次の手法は、試した読者も多いはずだ。立花式の真骨頂ともいえそうな部分である。
「パラグラフ単位に、頭の文章だけ読んでいく。続き具合がわからなくても、ワンセンテンスでやめて、次のパラグラフに飛ぶ。全ページをとにかくめくってしまう」
こうなれば、自分の目で立花さんの読書を見たい。そこで、東京・小石川の仕事場を訪ねた。地下2階から地上3階まで、壁がすべて書棚で覆われた「知の要塞」だ。