■毎日の習慣でできる対策の「裏ワザ」
実は笑顔を意識する以外にも、表情筋を鍛えるのに効果的な「裏ワザ」があります。それは「うがい」です。ぶくぶくうがいのときには、唇をしっかりしめてください。含んだ水を口の中で、勢いよく、早いスピードで還流させます。唇をしめることで、口元のたるみの原因となる口輪筋を鍛えることができます。
さらに、ぶくぶくうがいの時に、頬を片方ずつ大きく膨らませ、頬に広がる頬筋を使うと、頬全体が引き締まり、きりっと引き締まった表情になります。ほうれい線の改善にも役立ちます。
■顎のこわばり顎関節症の疑いも
長引くマスク生活の悪影響は「顔のたるみ」だけではありません。マスクをしながら会話をすると顎を動かさないので、顎関節症の初期症状である口の開きづらさや顎の痛みの自覚がなく、重症になって初めて気がつく人が増えています。海外では「コロナ禍の生活が顎関節症の原因となる」という医学論文が発表されているほど、深刻な状況です。
顎関節症の原因の1つが口呼吸です。マスクをしている時は鼻呼吸では苦しく、口呼吸になりやすいので、これを避けるために唇を意識的にしめる人がいます。意外にもこのしぐさが、顎の筋肉には負担となるのです。
通常、食事の時以外で無意識に唇を閉じているときは、上下の歯の間には1~2mmの隙間があり、顎はリラックスした状態です。顎の筋肉も伸びて、負担はかかっていません。これがぎゅっと唇をしめると、上下の歯が軽く接して顎の筋肉を使います。筋肉量のわずか7.5%ですが、平均157.2分間も噛み続けることができます。
一方、思いっきり奥歯を噛み締めるときに使うのは、筋肉量の40%と多いですが、疲れて1.4分間しか噛み続けられません。顎の筋肉への負担は、軽く噛み締めている方が大きく、強く噛み締めた時の20倍以上になります。軽い噛み締めの癖がある人は、ない人に比べて顎関節症になるリスクが2倍に上がってしまいます。
マスク生活で口を大きく開けることが少なくなり、顎がこわばっていても、自分では気がつきにくくなっています。違和感を覚えたときには、重症になって口が開けられなくなっていることもあるのです。まずは鏡の前で口を思いっきり大きく開けて、自分の指が3本入るかどうかを確認してみましょう。もし入らなければ、顎関節専門医の受診をおすすめします。
(監修/歯科医師・幸町歯科口腔外科医院・院長 宮本日出)
宮本日出(みやもと・ひずる)
歯科医師、幸町歯科口腔外科医院院長。日本顎関節学会・代議員・指導医・専門医、厚生労働省認定歯科医師卒後臨床研修指導医教官。1965年、石川県金沢市に三人兄弟の末っ子として生まれ、猛勉強を始め、愛知学院大学歯学部に合格。のちに歯科医師免許取得。現在では、国内外に160篇以上の論文を発表し、複数のメディアにも登場するカリスマ歯科医となる。