
一方、X警官は公判で「無理にお茶や水を飲ませていない」と主張した。
裁判所は最終的に警察の捜査を断罪した。
「X警官らは強制捜査で覚せい剤や注射器などを発見できなかった。Y被告を覚せい剤使用の罪により確実に有罪に持ち込むための決定的な証拠を獲得するために、採尿前に提供する飲料に覚せい剤を混入させる動機がないとはいえない」
「5時間に渡って、20~30杯のお茶や水を飲ませており、Y被告に気付かれずに秘密裡に覚せい剤を混入する機会がないとはいえない」
採尿前に飲ませた飲料にX警官らが覚せい剤を混入させた可能性を強く示唆した。そして、X警官らが覚せい剤を入手する方法についてもこう言及した。
「薬物事件担当の警官においては、覚せい剤関係者との接点があったり、捜索差押の過程で覚せい剤に触れる機会がある。警察署で正規に保管されている覚せい剤を持ち出す以外の方法でも、入手できる」
X警官や検察側の主張の大半を否定するという裁判所の珍しい判決だった。その背景には、X警官らの「不法行為」があった。
X警官は逮捕後、Y被告に携帯電話を渡して、使用させていたことが明らかになった。知人にLINEでメッセージを送信させ、それが既読になっていたことで裏付けられた。
Y被告が知らないはずの交際相手の女性の住所や部屋番号まで、X警官が教えたことも発覚した。
また、X警官はY被告から「携帯電話のことを裁判で暴露するなどと言われて、脅された」とも主張。拘置所にいるY被告宛に1万円を2回、現金書留で差し入れたことも法廷で明らかになった。
X警官は最初の証人尋問で現金の差し入れを否定したが、2度目の尋問では認めたため、裁判所はより強く不信感を抱いたようだ。判決では以下のように認定している。
「Y被告の兄の名前を使って私印偽造罪に該当しかねない方法で、現金1万円が入った書留郵便を2度にわたり送付した」