イタリア生まれを自称する謎の庶民文化史研究家が、日本にサラリーマンが登場してからの100年を概観。明治から平成にかけての新聞・雑誌記事などを丹念に読み込んだ上で、庶民生活の真相を徹底的に検証している。

 週休2日制が、70年代の導入初期には、「ゴロ寝の時間が増えるだけ」といった理由でなかなか受け入れられなかったとか、今では標準になっている社内での「お疲れ様」という挨拶が、もともとは芸能界発の流行語だったなど、目からウロコが落ちるような指摘が溢れている一方、「やる気がないくせにお金ばかりほしがる今どきの若者」は昔からいたなど、世代論に真っ向から疑問が突きつけられるくだりもある。「人間は100年くらいでは変わらない」という著者の主張に耳を傾けつつ、「昔はよかった」と安易に決めつける姿勢を見直したいところだ。(平山瑞穂)

週刊朝日  2021年3月5日号