第66回角川俳句賞に、東京大学文学部3年の岩田奎(けい)さんの「赤い夢」50句が選出された。同賞は「俳壇の芥川賞」と呼ばれ、俳壇で最も権威のある新人賞とされる。21歳の岩田さんは同賞の創設以来、史上最年少での受賞となった。本人に受賞の感想を聞いた。(東大新聞オンラインより転載、一部改変)
* * *
応募に当たっては、5月末の締め切りまでの2カ月間、集中して大量の句作に励んだという。受賞については「幸運だった」と謙遜しながらも「集中が成果を出した」と喜びを口にした。
今回受賞した「赤い夢」という表題に込めた思いを聞くと、「(一般的に)連作の題は俳句同様、何か思いを込めるものではないと私は考えています」。その上で「赤い夢」に関しては、京都府出身の岩田さんと同じく京都にゆかりのある俳人、故・田中裕明さんの同賞受賞作「童子の夢」へのオマージュも込められていると語った。田中さんは、今回岩田さんが更新した同賞のこれまでの最年少記録保持者でもあった。
普段は俳誌「群青」同人として、同誌への投句や評論連載の他、東大で開かれていた作句ゼミを前身とする「東大俳句会」の共同幹事を務めるなど、精力的に活動する。また、関東の学生句会により組織された、高校生を対象とする俳句賞「25」の実行委員長を務めるなど、俳句の裾野拡大にも励んでいる。
「俳句人口は低年齢に向かうほど少なくなる、逆ピラミッド型の年齢構成となっているので、この芸術を存続させていかねばという志もあります」
大学での専門は世界文学や翻訳論を扱う現代文芸論。学んだ手法を生かして「俳句を人文学の俎上(そじょう)にきちんと載せる」ことが将来の目標だという。今後の創作については「発表の機会も増えると思うので、とりあえず淡々と作りつつ、いずれは句集という形にまとめて世に出していければ」と意気込んだ。
角川俳句賞は俳壇に清新な風を吹き込む才能の発掘を目的として、1955年に創設された。主催は角川文化振興財団。毎年、未発表作品50句の応募作品を対象に受賞作が決まる。今回の岩田さんの受賞作は『俳句』(同財団発行)11月号誌上に掲載されている。
(文/東京大学新聞社)