書店員有志が中心となって設立された「料理レシピ本大賞 in Japan」の今年の受賞作がこれ。『ひと口で人間をダメにするウマさ! リュウジ式悪魔のレシピ』。著者のリュウジ氏はツイッターでレシピを発信し、100万人のフォロワーを持つ料理研究家である。
「悪魔のレシピ」というからにはおそろしく高カロリーな料理かと思いきや、コンセプトは意外とまとも。<1・ひと口で「人間をダメにするくらい」おいしい!のに><2・「最短で、最高の味が作れる」ことを考え抜き><3・しかも、掲載レシピの半数は「低糖質」>。<悪魔のレシピはデブメシだけじゃない>と豪語するだけあり、半数は低糖質の天使のレシピだ。
悪魔も天使もビックリの意表を突くレシピ集ではある。
<レンジだけで最高級レストランの味>という「半熟カマンベールカルボナーラ」は鍋もフライパンも使わない。半分に折ったパスタを耐熱容器に入れ、水と調味料と細切りベーコンとカマンベールチーズを加えてレンジでチン。その後でバターと溶き卵を入れて混ぜ合わせる。スナック菓子を使ったメニューもある。耐熱容器に移した「じゃがりこ」に熱湯とさけるチーズを入れ、ひたすら混ぜて粘りを出した「奇跡のじゃがアリゴ」。枝豆のかわりに「えだまりこ」を使ったリゾットは<生の枝豆より枝豆の香り>。表紙になっている「アボカドの漬け丼」はご飯の上にスライスし、めんつゆベースのタレに漬けたアボカド1個分をのせ、漬けダレをかけて卵黄と海苔をのせただけ。
電子レンジをフル活用し、時間や手間を省く省く。手抜きというより手順の破壊。本人によれば<料理はむずかしいと敬遠していた人には、「なんだ、それでいいのか!」と安心してもらえれば嬉しい>。そしてもうひとつ。<自炊を続けるコツは、人に発信すること>。つまりSNSにのせろと。そうだったのか。だからSNS上はメシの写真であふれているのか。納得。
※週刊朝日 2020年10月16日号