「あっ、もう! しっかり針刺してくださいよ」
「そんなこと言うたかて、こわいやないか」
さっきから夫と私が脂汗を出して騒いでいるのは、飼い猫に点滴をしようとしているからだ。
元ノラ、7歳。わが家に来たのが6月だったのでジュン(写真)。人間でいえば40歳過ぎたオジさんであるが、私にとってはやんちゃ坊主だ。
「またー! ジュン、やめなさい!」。2匹いるお姉ちゃん猫を追いかけまわすので、私は絶えず大声をあげていた。
ところが、急にぐったりとなって、ほとんど食べなくなった。餌の入った戸棚を開けただけで、飛んで来ていたのに。
血液検査の結果、クレアチニンなど腎臓の数値が異常に高い。数値が並んだ表に赤くラインが引かれたのを見て、明日にでも死んでしまうのではないかと、涙があふれた。
先生は「毎日点滴したほうがいいですが、お家でも十分できますよ」。
ケージに入れて通うのも可哀想だし、夫にしてもらおうと考えた。夫は首をかしげながらも点滴の様子を写メに撮った。
そして翌日、冒頭の騒動になったのだ。
「あーもう、逃げてしもたやないですか」
「そやから、無理て言うてるんや」
「先生が家でできますっておっしゃったでしょ。しっかりやってくださいよ」
「あかん、あんたやってみいや」
結局、疲れ果てた私たちは、病院へ行った。
それから2カ月。点滴、薬、ケア食、何が良かったのか数値も下がり、ジュンはとりあえずまた元気になった。
「これ、ジュン、やめなさい!」。叫び声が私の口からもれる、以前の穏やかな(?)日常である。
(浜田加代子さん/兵庫県/71歳/主婦)
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