暖冬ではじまった今年。私たちはあれよあれよとコロナ禍に覆われて息をこらしながら春を見送り、梅雨には豪雨に襲われ、8月になると猛暑の下でマスクをつけて動き、現在、台風シーズンの到来にうんざりしている。
まだ不明な点が多い新型コロナウイルスはともかく、せめて天候や気象についてもう少し詳しくなれないか。そんな思いから手に取ったのが、『こちら、横浜国大「そらの研究室」! 天気と気象の特別授業』。タイトルどおり、横浜国大の筆保弘徳教授たちによる気象学の入門書である。
なぜ空は青く、雲は白いのか? 筆保は素朴な疑問に答えながら気象の基礎について説いていく。たとえば、日々の天気予報で必ず耳にする高気圧と低気圧。ぼんやりと知っているつもりでも、具体的にそれらが何なのか問われると私などは答えに窮してしまうが、図表を使った筆保の解説を読むと、空気の温度と気圧の関係や風が吹く理由、さらには「気圧傾度力」と「等圧線」の関係についても無理なく理解できた。
異常気象に関しては、原因としてよく聞く「エルニーニョ/ラニーニャ現象」や「蛇行する偏西風の振れ幅」の他に、「インド洋ダイポールモード現象」と「北極振動」と「ブロッキング高気圧」を取り上げ、それらが及ぼす影響について図表とともに解説。その上で、人災ともいえるヒートアイランド現象や大気汚染にも言及し、バランスよく実情を明らかにしている。
そして、この本が画期的なのは、QRコードがいくつも付いている点だ。これらを利用すれば、空の動画や観測データを見ることができ、気象の世界がより身近になるだろう。
※週刊朝日 2020年9月18日号