みこ(写真、雌、推定7歳)は、急逝した元夫が遺した猫だ。
当時、12年を共にしたワンコを3カ月前に病気で亡くしたばかり。気持ちの折り合いがついていなかった私に、長女が「引き取り手がいない」と伝えてきた。
これも何かの縁かと、行くつもりのなかった告別式に参列し、青森県から茨城県までの長い道のりを、電車を乗り継いで連れてきた。
みこは道中ほとんど鳴かず、一緒に暮らしてからもじっとこちらの様子をうかがう日々が続いた。飼い主も住む所も変わり、戸惑っている姿に不憫さを感じた。
食欲がなくなると少し高めのフードを与えてみる。便秘になればペット用自動給水器で常時きれいな水が飲めるよう工夫する。長い時間外出しなければならないときは、自動給餌器を置く……。今は見守りカメラを購入しようか悩んでいる。少しでもみこの生活が快適になるようにしたいのだ。
昨年のクリスマスにはドーム形のベッドをプレゼントしたが、まったく使ってくれなかった。それどころか深夜、布団に入ってこようと鼻先をつんつんする。私はすぐに掛け布団を持ち上げて待つが、みこは一向に入る気配もなく、冷気だけが容赦なく入り込む。
「さ、さむい。早く入ってくださいませ。お嬢様」と心の中で懇願する。
最初の遠慮がちな態度はどこへやら、わがまま、気ままの、猫のあるべき姿に戻ったということか。
そんなみこが最近ある技を習得した。寝ている私を起こすために、前足をそっと頬にのせてくるのだ。あまりにもいとおしいその動作を見るために、私は寝たふりをして薄目をあけ、何度もその至福を味わう。
やっと心を許してくれたのか、それともただのわがままなのか。みこが来てから4年目の夏がくる。
(佐藤千鶴さん/茨城県/53歳/パート)
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