2017年度まで東大大学院総合文化研究科に勤めた経験から、東大では人事評価が同程度だった場合、自校出身者を優遇する傾向があると推測。研究員として3年在籍した米カリフォルニア大学バークレー校では自校出身者が応募すると自動的に評価が下がっていたという例を引き、その対照性を強調した。
しかし、東大でも学内の異質性が高い場所はあるという。「総合文化研究科・教養学部は英語コースPEAKの創設をきっかけとして、外国出身教員の採用を強化し始めました。日本人教員も東大外から多く採用しており、学内では比較的異質性が高い場所だと言えます」
教員自給率を下げるためには長期スパンで取り組むことが重要だという松田教授。「10年、20年かけて5割、6割に下げていくことが必要です」
ただ、教員自給率の問題はあくまで入り口で、本質は東大が異質性を嫌うところにあるという。「異質な環境の中に飛び込んだ経験のない教員が多い、というのが問題です。東大教員のマジョリティーは東大というある種のたこつぼの中で育った人たちで、若いころに異質な環境に飛び込む経験をしないと、年を取ってから殻を破る発想に至れません」
松田教授はかつて、医学系研究科の教授に、米国のメディカル・スクールに倣った学卒者の入試制度の導入を提案した。しかし「東大から医師になるなら理IIIの試験に合格した人でないと受け入れられない」と言われ、断られたという。成功体験からしかものを評価できないことが、文理の峻別や進学選択などを含めた東大の仕組みを変えるための強烈な足かせとなっている状況だ、と松田教授は語る。
(文/東京大学新聞社・中井健太)