■(5)ストレスをためない
ストレスが過剰になると、血糖値を上げるホルモンのアドレナリンやコルチゾールが分泌されやすくなり、逆に、血糖値を下げるインスリンが働きにくい状態に。こうしたホルモン分泌の乱れが、血糖値などに悪影響を及ぼし、生活習慣病につながっていきます。
ストレス対策に有効なのが、ここでもまた運動。筋肉の維持・増強という身体的なメリットと共に、“爽快感”という精神的なメリットももたらしてくれます。「仕事が終わってから運動するのは気が重いものですが、運動後は気分爽快。ストレス解消の意味でも運動は役立ちます」と、運動を習慣的に行っている寺本先生は言います。
■(6)禁煙
「たばこを吸っていてよいことは、何一つない」と寺本先生。例えば、たばこの燃焼時に生じる一酸化炭素が体内に入ると、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を増やしてしまいます。1日に10本以上吸う人は、脂質異常症やメタボリックシンドロームのリスクが高まります。
また、たばこは血圧にも悪影響を与えます。たばこを1本吸うと、血圧が10~20ミリメートルHg上昇するといわれ、動脈硬化のリスクが高まります。喫煙習慣がある人には、生活習慣病予防のためにも、禁煙をすすめます。
■(7)質のよい睡眠をとる
近年では、睡眠と生活習慣病の関連が明らかになってきています。例えば、睡眠不足はインスリンの働きを低下させることから、睡眠不足の人は、そうでない人に比べて糖尿病の発症リスクが約2~3倍、高血圧症の発症リスクは約2倍といわれています。また、睡眠時間が短くなると食欲を増すホルモンが増え、逆に満腹感につながるホルモンは減るので、過食を招きやすい状態に。睡眠時間が極端に短い人は肥満になりやすいことも分かっています。
必要な睡眠時間は人それぞれで、年齢や季節によっても変化するもの。目安として6~7時間の睡眠をとる人は、生活習慣病のリスクが低いというデータが出ています。すっきり目覚められ、日中も特に不調がなければ、よい睡眠がとれているといえるでしょう。
■(8)血液検査を定期的に行う
血糖値やコレステロール値、血圧が異常値でも、自覚症状はほぼ現れません。だからこそ大切なのが、定期的に健康診断(健診)を受けること。企業に勤めている人は、年に一度の健診が義務づけられていますが、主婦や自営業者は義務ではないために、健診の受診率も低くなっています。
健診の受診率から健康格差を見ることもできます。厚生労働省の平成26年調査で、所得と健診受診率との関係が初めて示されました。世帯所得が200万円未満の低所得者層は、高所得者層に比べて健診受診率が低くなっています。
企業の健診がない場合は、地域の特定健診(40歳以上)を受けるなどし、定期的に血液の健康状態をチェックするようにしましょう。最近では、簡易検査を行う薬局があり、自分で自宅でできる検査キットが売られています。どういった食事を摂ったり、生活を送ったりした時に数値が変化するのかを知る手段として、活用してみるのもよいでしょう。異常値が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。
監修/寺本民生(てらもと・たみお)先生
医学博士。1973年東京大学医学部卒業。帝京大学医学部学部長などを経て2013年寺本内科・歯科クリニック開業。専門分野は、内分泌、代謝、動脈硬化。日本動脈硬化学会名誉会員、日本成人病(生活習慣病)学会名誉会員。帝京大学医学部臨床研究医学講座特任教授、帝京大学臨床研究センター センター長。