本書は大学時代を競技ダンスに捧げた著者が、主人公に自身を投影した青春小説。
主人公である大船の視点からなる二つの軸で物語は進む。一つは大学卒業後、小説家になった彼の視点。次作の小説テーマを競技ダンスとし、かつての仲間に取材をする過程で、過去の自分を振り返っていく。もう一方は4年間を競技ダンスに捧げた、学生時代の大船の視点だ。二つの話が交互に展開され、過去と現在の対比に引き込まれる。
競技の魅力に取り憑かれた学生時代の大船。だが、次第に結果至上主義に陥る。部員との関係も悪化し、当初は良かった成績も徐々に落ち込み、部内での居場所がなくなってゆく。小説家としての大船が、学生時代の己と懸命に向き合う姿に心打たれる。本書を読めば、競技ダンスの魅力に心掴まれるだろう。(二宮 郁)
※週刊朝日 2020年4月24日号