BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2020」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは相沢沙呼(あいざわ・さこ)著『medium霊媒探偵城塚翡翠』です。
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著者の相沢沙呼さんは、2009年にミステリー作家の登竜門として名高い「鮎川哲也賞」を『午前零時のサンドリヨン』で受賞しデビュー。2020年5月には『小説の神様』が橋本環奈さんと佐藤大樹さんのW主演で映画化される「旬な作家」です。
本書はというと、本屋大賞ノミネートだけではなく、「このミステリーがすごい!」や「本格ミステリ・ベスト10」(ともに2020年版)、「2019年ベストブック」(Apple Books)の3冠を獲得。今、最も注目の本格ミステリー小説と言っても過言ではない作品です。
主人公の城塚翡翠(じょうづか・ひすい)は、魂を呼び寄せることで死者の言葉を伝えることができる霊媒師。まるで人形のように完璧に整った顔に、蒼白の肌、美しく長い黒髪、そして両目は碧玉(へきぎょく)色の瞳を持つ、どこかミステリアスな美少女です。
彼女の力は万能ではなく、非業の死の場合にはその人間の死んだ場所を特定しなければ、能力を発揮できません。加えて、致命的ともいえるのが、たとえ霊視によって犯人がわかったとしても証拠能力がないこと。それにより苦い思いをしたことも数知れず......。
翡翠の欠点を補いタッグを組むのは香月史郎(こうげつ・しろう)です。「警察の人間でも、探偵でもありません。ただのしがない物書きです」と話すように、彼の職業は推理作家。霊視でわかった犯人を追い詰めるため必要な証拠を集めるなど、論理の力で事件を解明します。
そんな2人が挑むのは、ここ数年、関東地方で起きている連続死体遺棄事件。一切の証拠が残っておらず、頼りになるには翡翠の力のみ。2人で挑んだ難事件の先に待ち受けていた衝撃の結末、そして明かされる翡翠の秘密とは......。
日本ミステリー界の巨匠である綾辻行人さんと有栖川有栖さんも絶賛した本書。4話構成で、1~3話では2人による謎解きが展開されますが、最終話でどんでん返しが起こるので、最後まで読み進めることをおすすめします。巨匠たちが絶賛する理由のみならず、「すべてが、伏線」というキャッチコピーの意味もきっと理解できるはず。ミステリー小説の完成度の高さが保障されている作品ともいえるでしょう。
著者がTwitterで「感想に困ったら、翡翠ちゃんかわいい、ってツイートしてください......」と投稿するように、帰国子女のお嬢様で美少女、しかもドジっ子の「翡翠ちゃんかわいい」。ネタバレ厳禁なので、それ以上の感想が出せないともいえます。あなたも、著者が仕掛けた罠に騙されてみませんか?
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