レンコンの収穫風景をテレビで観た。胸まであるゴム長を履いてレンコン畑に入り、太いホースを抱えその水勢で泥を払い除けながらレンコンを抜く。「やりてえ」と単純にそう思い、楽屋でその話をしたら前座の三遊亭二之吉くん(茨城出身)が「知り合いにレンコン農家がおりまして手配しますか!」と即答。「いいね!」「では直ちに!」というやりとりをしたものの、そもそもレンコン収穫時期って真冬じゃないか。死ぬほど寒くて冷たいのでは。そこへ面白半分の素人が飛び込んで行っては迷惑なのでは……話の急展開に怖くなった。「やっぱ、ちょっと待って!」。その後『レンコン収穫体験』で検索してみると出るわ出るわ。レンコン農家は意外と門戸を開いていた。「コネは使わず行ってみるよ!」と二之吉に告げ、泥に埋もれたレンコンを引っこ抜く爽快さを夢想する。冬の楽しみが一つ増えた。それまでに私のmixiのアカウントも、泥畑から引っこ抜いておくことにする。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
※週刊朝日 2022年7月8日号