フリーのライターを名乗ったものの仕事はほとんどない。それならばと、東京と大阪を片道2千円台という低価格で結ぶ深夜バスに乗ってあちこち出かけ、そこでの見聞をルポにまとめた。
神戸では、高齢者が平日の昼間に集う「昼スナック」を怖いもの見たさで訪れる。大阪では、銭湯の洗い場にある「鏡広告」に興味をもち、80代の広告会社社長や文字職人に会うなど、著者は40歳だが高齢者との相性がいい。
食堂めぐりには独特の味わいがある。「71歳のおじいちゃんが作るハンバーガーは全国3位」や「本当に営業中なのかわからない食堂『伊勢屋』のラーメンがうまい」など、マイペースな店主との雑談がいい。不便な立地に朽ちた外観。グルメ取材ならマイナス要素だが、店がなくなる前に食べに行きたい気にさせるパワーがある。(朝山実)
※週刊朝日 2020年1月31日号