世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。
■日本では牛の頭は入手できない
南アフリカ共和国のヨハネスブルグで、旧黒人居住区のソウェトに行った。そこの屋台で牛の頭を解体していたのだ。顔についた肉をそぎ取り、煮込んでスープと一緒に提供するという。メニューはその一点のみという強気な屋台だった。
私が気になったのは、牛の頭にぽっかり空いた穴だ。この穴に見覚えはないが、屠殺する際につけられるものだという話を聞いたことがある。ただし、残酷だという倫理的な理由もあって、日本では現在行われていないらしい。また、この穴が日本でみられないもうひとつの理由に「BSE」(牛海綿状脳症)がある。
日本ではBSEを防ぐために牛の特定部位を除去・焼却することを法律で義務付けている。頭部(舌と頬肉を除く)もここに含まれているのだ。つまり、ここに転がっているような牛の頭蓋骨というのは、日本では一般人が見ることのできないものなのである。
■そもそもこの頭ってどうしてるのさ?
ちなみに、牛の頭を中古品販売サイトで検索すると2万円前後で売られている。壁掛けや装飾された置物なのだが、まずまず需要があるのはわかる。すると日本に持って帰ったら商売になるのかなと思ったりもするのだ。
そこらに転がっている数を見ると、それなりの売上になるような気もする。だが南アフリカから日本へ持ち帰ることは、家畜への伝染病の危険性から認められていない。ちょっとした思い付きでお小遣い稼ぎをしようとして、検疫に引っかかる人もいるのだろうなと、ふと思った。(文/丸山ゴンザレス)