極限状況にある人たちが、そのときにとった食事を「極限メシ」と名付け、極地を歩く探検家や紛争地に派遣された看護師らが何をどのように口にしたかを聞いたインタビュー集。極限に挑戦した人たちのほか、自らの意思とは無関係に極限状況に陥り、そこから生還した人たちも登場する。

 レース中にヨットが転覆し、27日間漂流した佐野三治さんは、わずかな水とビスケットを6人で分け合った。仲間が亡くなるたびに水葬したが、最後まで食べ物で争うことはなかった。

 零下40度以下のシベリアで抑留生活を送った中島裕さんは食事の時は修羅場だったという。黒パンを切り分ける際、戦友たちが取り囲み「ちょっとでも目方が合わなければ、パンくずをのせて調整」した。飢餓は同じながら、人が見せる態度は異なる。考えさせられる一書だ。(朝山実)

週刊朝日  2019年12月27日号