1958年生まれ。大学卒業後、JT(日本たばこ産業)に就職。「勤務地域限定」の地方採用として入社。「どんなにがんばっても偉くなれない立場」から、キャリアをスタートさせる。日本一小さな工場勤務での、きめ細かなコミュニケーションを通じた働きぶりを買われ、本社勤務に。その後、営業経験がまったくない中で、全国最年少所長に抜擢され、リーダーとしての一歩を踏み出す。
職場再建のプロと称され、次々と任された組織を活性化させ、とうとう歴代最年少の支店長に大抜擢。31支店中25位より上位の成績をとったことがなく、閉塞感に陥っていた支店を2年連続で日本一に導く。2001年より、公益財団法人日本生産性本部・経営アカデミーなどのビジネススクールで多くの企業幹部、管理職、リーダーを指導。全国で年間100回以上の研修や講演を行い、コンサルタントとしても現場に入り込む。「離職率を抑え、メンタルを病む人をゼロにし、なおかつ目標を達成し続ける」ために、リーダーとともに考え、行動し、悩みの解決を図る。業種・業態を問わず、職場再建率は100%
1万人を超えるリーダーは、「同じこと」に悩んでいた
【悩み】正直にSOSをあげてくるメンバーはなかなかいません。「調子はどう?」と聞いても、みな「ぼちぼちです」と答えます。どうすればいいのでしょうか?
「調子はどう?」と聞かれたら、あなたならどう答えますか。
そんな漠然とした問いかけでは、部下も「ぼちぼちです」とふんわり返すしかないでしょう。具体的な答えを得たいなら、具体的に問いかけなければなりません。
「前回の提案で、苦手なクライアントにOKをもらえなかったと言っていたね。指摘された課題を解消した再提案を月末までにすると言っていたけど、提案の感触はどう?」といったように、「あの困りごとは解消できたか」と具体的に聞くのです。
「SOSを待つ」のではなく、部下がSOSの状態にあるのかどうかを、リーダーであるあなたから「問いを立てて顕在化させる」必要があります。
特に仕事の経験が浅い場合には、「本人自身が、何に困っているかもわからない」「困っていることが多すぎて絞れない」「困っていることがあるが、なぜこのような状況に陥っているのか理由がわからない」ということが起こり得ます。
リーダーにSOSを出そうにも、自分の状況をうまく伝えられないばかりに「SOSの出し方すらわからない」という厄介な事態が発生することがあるのです。
だからこそリーダーには、「部下が何に困っているのか」にアンテナを張り、具体的に「今、これに困っていないか?」と質問をして、困りごとをあぶり出す力が求められます。
●部下からの相談はメモに残す
部下のSOSを顕在化させるために重宝するのが「メモ」です。部下の相談を受けたときは、何月何日の何時にどんな相談を受け、どんなアドバイスをしたのか、メモを残しておきましょう。「日付/相談内容/アドバイスの内容/改善策」のように、あらかじめフォーマットをつくっておくと便利です。
私が行うリーダー研修ではよく、「部下の誰から、いつ、どのような相談を受けたかをすべて覚えていますか?」と問いかけます。覚えているリーダーは10人中、2人くらいです。
それに加えて、「その相談にどのようなアドバイスをしたか、そしてそのアドバイスに部下がどのような反応を示したか覚えていますか」と聞けば、覚えているリーダーはほぼいません。
そもそも覚えていないのでは、後々「あれはどうなった?」と確認することもできません。
一方、メモを残しておけば、「2週間前の火曜日の午後に相談に来てくれたよね。あのとき『じゃあこうしてみよう』と結論が出たあの件はどうなった?」と具体的に確認できます。
SOSの発掘にメモは必須です。メモをもとにどんどんリーダーから問いかけましょう。「こんな状態になる前に相談に来てくれたら、なんとか挽回できたのに」という残念な事態を減らし、タイムリーな対応ができるようになります。