朝日新聞のシニア記者である菅沼氏と、長く水道行政に携わってきた菊池氏による共著。日ごろあたりまえのものとみなして意識することもない水道が、ライフラインとしていかに大事なものであるか、それが予算不足からいかにギリギリの人員で維持されているかに目を向けさせられる。
高度成長の波に乗ってわが国の給水事情は飛躍的に改善されたが、人口減少や節水機器の普及等により、現在ではむしろ「水余り」が生じ、過剰投資となったダムの建設費用が水道水からの収入で賄えず、税金で補填するような本末転倒がまかり通っている。
戦前は主流だったという、微小生物の働きでゆっくりと浄化を図る「緩速濾過法」の復権なども含め、数十年先を見据えた水道事業のダウンサイジングに本気で着手する潮目が来ている。(平山瑞穂)
※週刊朝日 2019年11月29日号