
「風景写真は、『最初の一歩』がいちばん難しい。最初の一歩というのは着眼点」風景写真の作品で問われるのは、いかにほかの人とは違うものを見つけられるか、それは「何を面白がれるか」といっても過言ではない――。『アサヒカメラ』2019年10月号では、62ページにわたって「紅葉と秋の風景の撮影術」を大特集しています。風景写真家の辰野清さんが徹底解説する、天候や時間帯、撮影場所の違いに応じた撮影ガイド。前回の「朝夕の光を生かす紅葉の撮り方」に続き、「水辺の紅葉撮影術」を抜粋して紹介します。
【「ポイントとなるのは小さな島」縦位置で水面を多く取り入れた1枚】
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ポイントとなるのは、やはり水。
湖や沼では、水面の反射によって被写体をよりアピールできるうえ、揺らぎによる変化が生まれる。実像と虚像の対比によって水面に映り込んだ紅葉はストレートに写したものよりも心象的な意味合いが込められる。単に「こういう紅葉がありましたよ」という写真ではなく、「こういう紅葉があるんだな」と、想像するように見えてくる。微妙な揺れによって画面に強い部分と弱い部分が生まれ、複雑さや面白みが増してくる。
映り込みの紅葉写真は、空を入れると、どうしても空の明るさが邪魔してしまい、画面全体のバランスをとることが難しくなるので、極力、空を入れない構図でまとめることが基本となる。
シャッターチャンスは太陽の方向によって変わってくる。光が直接当たった紅葉の映り込みはきれいだが、コントラストがきつく、明るい実像の紅葉に視線が引っ張られてしまう。水面への視線を邪魔しない程度の明るさの光を探していこう。

上ページの写真には、メリハリがあるうえに品のいい光が当たるぎりぎりの位置にある日陰の紅葉が映り込んでいる。紅葉というと、どうしても色が注目されがちだが、色をアピールするより画面全体のバランスや印象を大切にフレーミングをまとめていく。