9月になっても真夏日が続いていましたが、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるように、これからは秋らしい陽気が期待できそうですね。
さて、ちょっとした俳句の心得。今回は「けふ(今日)の風、けふの花」です。俳句は自然とともにある自分の心を、日々の暮らしのなかで詠むものなのですが、例えば自然の少ない大都会、あるいは美しい自然がなければ詠めないのでしょうか。「けふの風、けふの花」とは、「心新しくあれば、今日の風も花も違って見える」の意。つまり日々の暮らしのなかで、少なからずある感動をキャッチできるか否かというのがこの言葉の真意なのです。
俳句をたしなまなくても、知っているとちょっと得意、おまけにボキャブラリーも増える、そんな古語の世界を少しだけご紹介しましょう。

わかると楽しい古語「あ行 動詞・形容詞・副詞編」

これまで古語の名詞をご紹介してきましたが、今回より動詞・形容動詞など、ワンランク上の古語もご紹介していきたいと思います。正直、日常生活ではあまり使うことはないのですが、推敲の幅がぐっと広がること間違いなしですよ!
今回は「あ行」の動詞・名詞・副詞の意味を考えてみましょう。
初回は慣れてもらうため、問題形式にしませんでした。例句で使い方を学んでみてくださいね。
1 「あぎと・ふ」〈動四〉
意味:魚が水面で口をパクパクすること。
〈金魚あぎとひ主婦また同じ二間掃く〉中村草田男
2 「あざらけ・し」(鮮らけし)〈形ク〉
意味:新鮮であること。
〈春山に薪を積めるは鮮らけき〉富安風生
3 「あだ・なり」(徒なり)〈形動ナリ〉
意味:はかない。むなしい。
〈梢よりあだに落ちけり蝉のから〉松尾芭蕉4 「あだ・めく」(艶めく)〈動四〉
意味:色っぽいこと。
〈梅散るや衣紋あだめく人の春〉尾崎紅葉
5 「あは・し」(淡し)
意味:薄い、あわい。淡泊。
〈冬日濃し冬日淡しと干す瓦〉後藤比奈夫
6 「あまね・し」(周し・普し・遍し)〈形ク〉
意味:すみずみまで広く行きわたっていること。
〈鷹とんで冬日あまねし龍ヶ嶽〉前田晋羅
7 「あや・む」(殺む)〈動下二〉
意味:殺傷する。
〈サフランや映画はきのう人を殺め〉宇田喜代子
8 「あらは・なり」(露なり・顕なり)〈形動ナリ〉
意味:丸見えなこと。あけっぴろげなこと。
〈月出でて鬼もあらはに踊りかな〉河東碧梧桐
9 「あらまほ・し」〈形シク〉
意味:そうであってほしい。
〈黄菊白菊一もとは赤もあらまほし〉正岡子規
10 「あ・る」 (現る・生る)〈動下二〉
意味:現れる。生ずる。
〈月白に色生るるもの消ゆるもの〉後藤比奈夫

(参照:俳句のための古語辞典 株式会社学習研究社/広辞苑/合本俳句歳時記/俳句開眼100の名句 ひらのこぼ・著 草思社)

蝉の抜け殻
蝉の抜け殻

使いこなすのは難しい古語

今回から古語の動詞・形容詞編を始めましたが、いかがだったでしょうか? 漢字で書けるのは想像できますが、ひらがなの古語は未知の言葉のようでしたね。
そこには俳句ならではの言葉使いがキーワードになっています。たった十七文字しかないのですから、いかにスマートに美しく伝えることができるのかが、現代においても古語が使われている理由なのかもしれません。使いこなすまでには時間と経験が必要なことは確かですが、日本語の幅広さを学べるチャンス!
「かっこよくて面白い古語の世界」これからも続けていきます。

サフラン(秋の季語)
サフラン(秋の季語)