フリーズだけはするまいと心に決めて試合に挑んだが、終わってみれば、ひっくり返るどころか1メートルも動くことができなかった。疲労困憊(こんぱい)でボールに触った記憶もほとんどない。見た目はゆるいが、動きは全然ゆるくないじゃないか……頭の中でそう愚痴をこぼすのが精いっぱい。言うまでもなく、翌朝は激しい筋肉痛に襲われた。
ゆるスポは当初、ネット上などで「スポーツではない」という批判の声もあった。ただの遊びじゃないか、と罵(ののし)る人も。
だが、澤田さんは言う。
「たとえ『勝っても負けてもいいよね』とゆるい気持ちで競技に臨んだとしても、そこで勝つとその自信が日常にも生かされる。今まで得られなかった勝利体験を味わえることもあるのです。それに、ゆるスポは何といってもラインアップが豊富。どんな障がいがあっても複数種目に参加できる。パラ競技は盛り上がりを見せていますが、それとは別に、気兼ねなく参加できるコミュニティーとしてゆるスポがあればいい。そんな居場所が作れればと考えています」
最近では、対戦型のゲームで世界中の人たちと腕を競い合う「eスポーツ」も登場するなど、スポーツの定義が少しずつ広がり始めている。年齢や性別を問わず楽しめるのは、ゆるスポの意義に同じだ。
スポーツ庁によれば、「スポーツ」には本来「気晴らし」「遊ぶ」「楽しむ」などの意味もあるという。どうしても勝敗を競いたくもなるが、こだわりすぎて楽しめなくなっては意味がない。「勝ったらうれしい、負けても楽しい」をコンセプトに掲げるゆるスポーツが広まれば、スポーツ弱者がいなくなる日もそう遠くない。(編集部・福井しほ)
※AERA 2019年7月8日号